税理士が顧問料の改定を切り出す前に|集客の発信で伝えておく3つのこと
顧問料の値上げは、切り出し方より前の準備で決まります。何をしているか、何が変わったか、料金の考え方の3つを普段から書いておけば、改定の話は突然ではなくなります。その発信の作り方を、税理士事務所のAI集客(GEO・AI-SEO対策)を支援する視点で解説します。

「顧問料を上げたいけれど、どう切り出せばよいか分からない」という悩みを、小規模な税理士事務所の方からよく聞きます。
人件費も、ソフトの費用も、事務所の家賃も上がっているのに、顧問料だけが10年前のままという契約が残っています。話を切り出せば関係が悪くなるかもしれないと考えて、そのままにしてしまうわけです。
私は税理士ではなく、税理士事務所の集客をAIとSEO・GEO(生成AIに引用されるための対策)で支援する立場です。その立場から見ていて思うのは、値上げがうまくいくかどうかは、切り出したその日ではなく、その前の1年で決まっているということです。
「突然」に感じさせてしまうことが問題です
値上げの相談が難しくなる最大の理由は、金額ではありません。顧問先にとって唐突に感じられることです。
毎月の請求書は届いていますし、年に数回は顔を合わせています。それでも顧問先の側から見ると、税理士事務所が普段どんな仕事をしているのかは、ほとんど見えていません。決算と申告のときだけ動いているように映っている場合すらあります。
その状態で「来期から顧問料を改定させてください」と言えば、相手の頭に浮かぶのは「何が変わったのだろう」という疑問です。理由を説明されても、その場で初めて聞く話は、どうしても後付けに聞こえます。
逆に、普段から仕事の中身や制度の変化を発信していれば、改定の話は「そういえば、最近こういう話をされていましたね」という文脈の中に入ります。同じ金額、同じ言葉でも、受け止められ方がまったく違ってきます。
価格交渉は、もう特別なことではありません
ここで一つ、参考になる数字があります。
中小企業庁が2026年6月26日に公表した「価格交渉促進月間(2026年3月)フォローアップ調査」によると、発注側との間で価格交渉が行われた割合は90.7%でした。価格転嫁率は54.2%で、コスト要素別に見ると原材料費が55.7%、労務費が50.0%、エネルギーコストが48.9%となっています。
つまり、取引先に価格の話を持ち出すこと自体は、今の日本ではごく普通のことになっています。9割の企業が実際にその交渉をしています。
この数字は、顧問先である中小企業の経営者自身も、自分の取引先に対して値上げの相談をしているということでもあります。相手も同じ立場を経験しているのです。「値上げの話をすると嫌われる」という前提は、実態よりかなり厳しく見積もりすぎている可能性があります。
なお、この調査は取引全般を対象にしたもので、士業の報酬に限った統計ではありません。数字はあくまで空気感の参考としてお読みください。
関連: 秋の税務調査シーズンを前に──「調査が来たらどうなるのか」に先回りして答える税理士の発信 で詳しく解説しています。
値上げの前に発信で伝えておく3つのこと
では、何を書いておけばよいのでしょうか。私は次の3つに絞ってよいと考えています。
1. 普段、何をしているか
いちばん抜けやすいのがこれです。顧問先に見えていない仕事を、言葉にしておきます。
月次の数字を見て気になった点を確認しています。制度改正があれば、影響のある顧問先を洗い出します。金融機関へ提出する資料の内容にも、事前に目を通しています。どれも当たり前にやっていることですが、当たり前だからこそ誰も説明しません。
ブログでもニュースレターでも、「今月やっていること」を淡々と書くだけで十分です。宣伝の文章にする必要はなく、むしろしないほうが伝わります。
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2. 制度の側で何が変わったか
税制や実務のルールは毎年動きます。その変化に対応するために事務所側の作業が増えているという事実は、値上げの理由としてもっとも納得を得やすい部分です。
ここで大事なのは、改定を切り出す直前ではなく、変化が起きたそのときに書いておくことです。制度が変わった時点で「これに対応するため、事務所ではこういう確認を追加しています」と書いておけば、半年後に料金の話をしても、理由がすでに共有された状態から始められます。
なお、制度の内容は改正や運用の変更があり得ますので、記事にする際は公表資料を確認したうえで、読者にも最新情報の確認を促す一文を添えてください。
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3. 料金の考え方
金額表そのものを公開するかどうかは、事務所の方針によります。ただ、何によって料金が決まるのかという考え方は、公開しておいて損がありません。
売上規模なのか、仕訳の件数なのか、訪問の頻度なのか、対応する税目の数なのか——この軸が示されていれば、顧問先は自分の状況が変われば料金も変わり得ることを、あらかじめ理解できます。
創業時に依頼した規模のまま何年も同じ金額でいるのは、実はこの軸が共有されていないためです。事業が伸びて作業量が増えていることに、双方が気づかないまま来てしまいます。
どこに書くかで、届く相手が変わります
この3つは、書く場所によって届く相手が変わります。
既存の顧問先に届けたいなら、メールでのお知らせや、面談時にお渡しする1枚の資料が確実です。事務所のサイトに書いても、既存の顧問先は見に来ません。
これから依頼を検討する人に届けたいなら、サイトの記事として置きます。料金の考え方を公開している事務所は、探している側からするとかなり選びやすくなります。
そして最近は、もう一つの読み手を意識する必要があります。生成AIです。
依頼者が「〇〇市 税理士 顧問料」と検索する前に、まずChatGPTなどに相談して当たりをつける場面が増えてきました。AIは、料金の考え方が文章で書かれているページからは引用できますが、画像の料金表からは読み取れません。表形式で載せる場合も、本文で内容を言葉にしておくと拾われやすくなります。
私は税理士事務所の集客支援では、検索で上位に出すSEOに加えて、生成AIに正しく引用してもらうGEOの視点を組み合わせることを大切にしています。狙ったキーワードで見つけてもらえるようにし、AIにも拾われやすい書き方へ整えていきます。時間はかかりますが、こうした積み重ねが問い合わせの入り口を少しずつ広げていきます。
実際に切り出すときの順番
発信の準備ができたうえで、改定を伝える手順は次のようになります。
最初に、対象を絞ります。 全顧問先に一斉に通知するのは、もっとも波風が立つやり方です。作業量と料金の差が大きくなっている先から順に、個別に相談する形にしてください。
次に、面談の場で伝えます。 メール1通で済ませないほうがよい話です。文面だけだと、相手は反論も質問もできないまま受け取ることになります。
理由は、作業の中身で説明します。 「物価が上がったので」という理由だけでは、顧問先は自社との関係を見出せません。「御社の場合、この数年で取引が増えて確認する件数がこれだけ変わっています」と、その顧問先固有の事実で話すほうが通ります。
そして、猶予を持たせます。 次の契約更新から、あるいは翌期からという形にすれば、相手にも社内で調整する時間があります。
私自身、事業をしていた頃は顧問税理士にお願いしていました。数字の正確さはもちろんですが、いちばんありがたかったのは「これは経費で大丈夫」「ここは危ない」と、迷ったときに相談できる安心感でした。依頼した側として実感したこの価値は、料金の話をするときにこそ言葉にすべきものだと思います。安さではなく、相談できる安心をどう伝えるか——そこが値上げの核心です。
よくある質問
Q. 発信を始めてから、どのくらいで改定を切り出せますか
半年から1年を目安に考えてください。制度改正の記事が数本、事務所の仕事内容の記事が数本たまった段階なら、「以前お伝えしたとおり」と言える材料が揃います。
ただし、赤字が続いているような状況であれば、発信の蓄積を待たずに相談すべきです。準備は理想であって、条件ではありません。
Q. 顧問先が離れてしまうのが怖いのですが
一定数の解約は起こり得ます。それを前提に、どこまでなら受け入れられるかを先に決めておくほうが、判断が揺れません。
一方で、作業量に見合わない料金の顧問先を抱えたままだと、新規の相談に手が回らなくなります。時間が空けば、その分を新しい依頼に充てられます。どちらが事務所にとって良いかは、数字で比べられるはずです。
Q. 記事を書く時間がありません
すべてを一から書く必要はありません。制度改正の解説であれば、公表資料の要点を整理し、そこに「うちの顧問先で言えばこういう影響があります」という一段を足すだけで、十分に読まれる記事になります。
下書きの作成は生成AIに任せられる部分です。ただし、税務の判断が入る箇所は必ずご自身で確認してください。AIの出力には、もっともらしく見える誤りが混ざります。
Q. 料金表をサイトに載せるべきでしょうか
金額を出すかどうかは方針次第ですが、少なくとも料金が何で決まるかは書いておくことをおすすめします。金額の目安すら分からない事務所は、比較の段階で候補から外れやすくなります。
まとめ
顧問料の改定は、切り出し方の技術ではなく、その前の積み重ねで決まります。
- 普段の仕事の中身を書いておく
- 制度が変わったそのときに、対応の追加を書いておく
- 料金が何で決まるのかという考え方を示しておく
この3つが揃っていれば、改定の相談は突然の話ではなくなります。まずは今月あった制度の変化について、事務所として何を確認したかを1本書くところから始めてみてください。
税理士事務所のAI集客(GEO・AI-SEO対策)や、料金の考え方をどう発信に落とすかについては、実際の記事構成の形でご相談いただけます。
参考・出典
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