税理士事務所のAI活用と集客|業務効率化と検索・生成AI対策の全体像
税理士事務所のAI対応を、業務でのAI活用と、Google検索や生成AIの回答で事務所を見つけてもらう集客の2つに分けて整理します。税理士事務所のAI集客(GEO・AI-SEO対策)を支援する立場から、取り組む順番とテーマ別の7本の記事をご案内します。

要約
- 税理士事務所とAIの関係は、「業務でのAI活用」と「検索・生成AIでの集客」の2つに分けると整理できます。生成AIとは、質問すると文章を作成して回答する仕組みです。
- 業務では、定型作業をひとつ選んでAIに任せ、税法の解釈や顧問先ごとの判断は税理士が担う、という線引きから始めます。
- AI集客では、基本的なSEOとGoogleビジネスプロフィールの整備がそのまま有効です。SEOは検索結果の上位に表示させるための施策、Googleビジネスプロフィールは地図検索に表示される事務所の情報欄です。
税理士事務所のAI対応は2つの領域に分けて考える
「税理士 AI」と検索すると、AIによる業務の減少、便利なツール、AIを活用した集客といった情報が混在して表示されます。まず押さえておきたいのは、税理士事務所のAI対応には、性質の異なる2つの領域があるという点です。
1つ目は、事務所内の業務でのAI活用です。AI(人工知能)とは、人が書いた文章や質問に文章で答えたり、作業を手伝ったりするコンピューターの仕組みのことです。記帳や照合、顧問先からの質問への一次対応など、事務所内の多くの業務で活用できます。
2つ目は、AIを通じて事務所を見つけてもらう集客です。現在は、Google の検索結果の最上部に、AIが要約した回答が表示されるようになりました。また、ChatGPT(質問に文章で答えるAIのサービス)のような生成AIに、税理士の探し方を尋ねる人も増えています。その回答の中に事務所のページが表示されるかどうかが、新たな集客経路になっているのです。
私は税理士ではありません。税理士事務所の集客を、AIとSEO・GEOで支援する立場で仕事をしています。SEOとは、Google などの検索結果で自分のページを上位に表示させるための施策です。GEOとは、生成AIの回答の中で、事務所のページを参照元として紹介してもらうための施策です。本記事では、この2つの領域を順に解説し、テーマ別に詳しく解説した7本の記事をご案内します。
業務でのAI活用:AIに任せる作業と税理士が担う判断を切り分ける
AIに任せるのは「作業」、残すのは「判断」
業務でAIを使うときに最初に決めるべきことは、どこまでをAIに任せ、どこからを人が担うかという線引きです。
私が支援している税理士事務所では、帳簿への定型的な入力や、決まったルールに沿った計算をAIに任せています。一方で、税制改正への対応や、顧問先ごとの事情をふまえた判断は、必ず事務所の担当者が行うルールにしています。
この線引きが重要な理由は、私自身がAIの誤りを何度も見てきたからです。生成AIに税務相談の回答案を作らせたとき、配偶者控除の所得の条件が古い情報のまま出てきたことがありました。また、別のAIが、グレーゾーンの節税の手法を「合法です」と言い切ったこともあります。AIはもっともらしい文章を作りますが、税法の解釈の正しさまでは保証しません。
税理士の業務は、税務代理・税務書類の作成・税務相談の3つで、税理士には職務上知り得た秘密を守る義務(守秘義務)があります。ですから、顧問先の情報をどこまでAIに渡すかも、使い始める前に決めておくべき線引きのひとつです。
詳しくは、次の2本の記事で解説しています。
- 税理士の仕事はAIに取られるのか|AIに移る作業と、税理士に残る判断の分け方 仕事を「作業」と「判断」に分けて考えます。作業はAIに任せ、判断の中身を顧問先とホームページで伝える方法を書いています。
- 税理士業務のどこにAIが入るのか|5つの業務を工程に分けて任せる範囲を決める 記帳から税務調査への対応までの5つの業務を工程に分け、AIに任せる工程と税理士が担う工程を一覧にしています。
ツール名ではなく「何に使うか」で選ぶ
AIツールは種類が多く、名前で比較しても判断がつきません。ツールは名前ではなく、何に使うか(用途)で選びましょう。
- 税理士のAIツール利用状況|ツール名でなく4つの用途で比較 2026年春の調査では、生成AIを組織で進めている中小企業は3社に1社で、4割近くは方針が決まっていませんでした。この記事では、AIに任せる範囲を4つの用途に分けて決める方法を紹介しています。
小さく始めて、文書にしてから広げる
支援先の税理士事務所では、銀行の明細・領収書・請求書の3つを突き合わせる作業をAIで自動化しました。AIの結果については、数字の不一致を人が確認する手順を設け、異常が出たら、そこから先は事務所の担当者が判断します。この照合の仕組みで、確認作業の効率は2〜3倍になりました。
ここで大事なのは、最初から完璧を目指さないことです。最初は7割程度の完成度で運用を始め、使いながら改善していくほうが定着します。もうひとつ大事なのは、AIの設定と判断の基準を最初から文書にしておくことです。私はかつて、自分しか分からない複雑な仕組みを作りこみ、ほかの人が引き継げなくなった失敗をしています。会社の買収の交渉で「この人が抜けると回らなくなる」と指摘され、評価を下げられたこともあります。それ以来、仕組みは誰でも引き継げる形で残すようにしています。
- 税理士のAI活用が定着する進め方|定型作業ひとつから3か月〜6か月で広げる 定型作業をひとつ選んで7割程度の完成度で運用を始め、設定と判断基準を文書にしてから広げる進め方を書いています。
顧問先からの同じ質問を、AIで一次対応する
小さな税理士事務所からは、「同じ質問への対応に時間を取られる」「繁忙期は新規のお客さまへの対応が追いつかない」という悩みを、何度も聞いてきました。
参考になるのが、国税庁の税務相談チャットボット「ふたば」です。チャットボットとは、質問を入力すると自動で回答する仕組みです。「ふたば」は24時間利用でき、年末調整・確定申告・インボイス制度などの質問に、AIが選択肢やキーワード検索で答えます。よくある質問への一次対応は、すでにAIが担える形になっているのです。
- 年末調整の質問対応にAIを使う|顧問先からの同じ質問をAIで減らす仕組みの作り方 年末調整の時期に集中する同じ質問を、AIで一次対応する仕組みを、質問の集め方から線引きの決め方まで解説しています。
検索・生成AIでの集客:検索結果とAIの回答に事務所を表示させる
GoogleのAI表示に特別な対策は不要
Google には、検索結果の最上部にAIが要約した回答を表示する機能(AIによる概要)と、AIと会話するように質問を続けられる機能(AIモード)があります。AIによる概要には、回答の下に参照元のページへのリンクが付きます。ここに事務所のページが表示されれば、そこから閲覧者が訪れます。
Google は、この2つに表示されるための条件を公式に説明しています。
- ページがインデックスに登録されていること(インデックスとは、Google がそのページを検索結果に出せる候補として記録することです)
- Google 検索でスニペットを表示できる状態であること(スニペットとは、検索結果でページのタイトルの下に出る短い説明文です)
- 検索の技術的な要件を満たしていること
Google によれば、これ以外に追加の技術的な条件はなく、AIによる概要やAIモードのための特別な最適化も必要ありません。AI用の特別なファイルや、AI用の特別な構造化データ(事務所名や住所を、Google が読みやすい形でページに書き込んだもの)も不要です。
つまり、取り組むべきことは基本的なSEOです。Google が挙げている基本は次のとおりです。
- robots.txt でクロールを許可する(robots.txtは、Google の自動プログラムに読んでよいページを伝えるファイルです。クロールとは、その自動プログラムがページを読みに来ることです)
- 内部リンクでページを見つけやすくする(内部リンクとは、自分のサイトの中の別のページへのリンクです)
- ページを使いやすくする
- 大事な内容は画像ではなく文字で書く
- 構造化データは、画面に見える文字と一致させる
- ビジネスプロフィールの情報を最新に保つ
- 文章を補う、質の高い画像や動画を載せる
実際に、私が執筆したページも、競争の激しいキーワードで Google のAIの回答の本文に引用されています。AIの回答から直接ページを訪れる人がいることも、自分のサイトで確認しました。特別な手法ではなく、基本を着実に積み重ねたページがAIに引用されるのです。
既存のページから見直す
新しい記事を書く前に、既存のページを見直すほうが早く成果につながります。
- 税理士のAI集客|今日確認できる5か所を直して問い合わせを増やそう 料金ページ、Googleビジネスプロフィール、税理士情報検索サイトの登録内容、問い合わせフォーム、過去の記事の見出しの5か所を見直す方法を解説しています。
税理士情報検索サイトは、日本税理士会連合会が運営している、全国の税理士を探せるサイトです。登録内容が古いままになっていないかは、すぐに確かめられます。
まず、自分の事務所のサイトが Google に登録されているかを確かめましょう。Google の検索窓に「site:」と入れ、続けて自分のドメインを入れて検索します。ドメインとは、「zeirishi-ai.com」のような、サイトの住所にあたる文字列です。ここで事務所のページが表示されなければ、AIによる概要に表示される以前の段階に課題があります。
地図検索ではGoogleビジネスプロフィールが最初の接点になる
近くの税理士を探す人は、Google マップや地図の検索結果を見ます。そこに出る事務所の名前・住所・営業時間・クチコミの欄が、Googleビジネスプロフィールです。
Google によれば、地図の検索での順位は「関連性」「距離」「知名度」の3つで決まります。知名度には、リンクの数やクチコミの数が影響します。Google が勧めているのは次のことです。
- オーナー確認をする
- 住所・営業時間・業種を正確に、すべて入れる
- クチコミに返信する
- 写真を載せる
ホームページ側でも、事務所の情報を構造化データで記述できます。構造化データとは、事務所名・住所・営業時間などを、Google が読み取りやすい決まった形でページに書き込んでおくものです。事務所向けの構造化データ(LocalBusiness)では、事務所の名前と住所が必須で、営業時間・電話番号(国番号と市外局番つき)・URL(ホームページの住所)を入れることが勧められています。これを書いておくと、検索した人に、事務所の名前や営業時間などをまとめた枠(ナレッジパネル)として情報を表示しやすくなります。
検索する人の目的に合わせてページを用意する
「AI 税理士」と検索する人が、全員同じものを探しているわけではありません。検索する人の目的ごとにページを分けて回答することが、検索結果でもAIの回答でも選ばれる最も確実な方法です。
- 「AI 税理士」と検索する人は何を探しているのか|事務所のページで答える方法 検索する人は、申告を安く済ませたい人、AIに強い税理士を探している経営者、業界の先行きを知りたい人の3種類に分かれます。事務所は前の2種類に向けて、ページを分けて答える方法を紹介しています。
AIで記事を作成する際の注意点
ブログ記事をAIで書くこと自体は禁止されていません。ただし Google は、読者にとって価値が低い大量のページを作ると、スパム(検索結果を荒らす行為)に該当するおそれがあるとしています。AIで作るときも、タイトル、メタディスクリプション(検索結果の説明文の元になる短い文)、構造化データ、画像の説明文の正確性などを優先するよう求めています。
Google は、信頼できるページかを評価する観点として E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性の頭文字)を挙げています。E-E-A-Tの中でいちばん大事なのは信頼性です。Google は、誰が書いたかを書き手の名前で示すこと、AIなどを使ったならそれが読者にわかるようにすること、人の役に立つために作ったものであることの3つを確かめるよう勧めています。
税理士事務所は、もともと信頼で選ばれる仕事です。税理士本人の名前で、事務所の経験や判断の考え方を書きましょう。このようなオリジナルの記事は、AIが量産した記事には書けない価値があります。
成果は無料ツールで確認する
対策の効果は、Google の無料ツールで確認できます。
- Google Search Console(サーチコンソール):自分のサイトが検索でどう見えているかを確認するツールです。サイトが表示された検索キーワード、表示された回数、クリックされた回数、掲載の順位がわかります。Google への登録(インデックス)の問題も確かめられます。AIによる概要などに表示された分も、ここの「ウェブ」検索の数字に含まれます。
- Google アナリティクス:訪問者数や、問い合わせにつながったかを確認するツールです。
取り組みの優先順位
両方の領域に同時に取り組む必要はありません。集客の導線と業務の線引きを、ひとつずつ段階的に整えましょう。推奨する手順は次のとおりです。
- 「site:」検索で、自分のサイトが Google に登録されているかを確かめる
- Googleビジネスプロフィールと税理士情報検索サイトの登録内容を、最新にする
- 料金ページや問い合わせフォームなど、既存ページの導線を整える
- 業務の中から定型作業をひとつ選び、AIに任せる範囲と、人が判断する範囲を決める
- Search Console で、どのキーワードで表示されているかを毎月確認する
私は以前、月に10回ほどしか閲覧されていなかったサイトを改善した経験があります。キーワード設計を見直し、記事の統合や書き直しを進めた結果、3〜6か月で月1万回閲覧されるまでになりました。基本的な改善の積み重ねが、成果につながるのです。
よくある質問
Q. AIに税理士の仕事を取られませんか?
計算や入力のような作業は、AIに移っていきます。一方で、税法の解釈や、顧問先ごとの事情をふまえた判断は、税理士に残ります。AIは、古い情報や法的に判断の分かれる手法を、正しいものとして断定的に回答することがあるからです。重要なのは、残る判断の中身を顧問先とホームページで伝えることです。詳しくは「税理士の仕事はAIに取られるのか」をご覧ください。
Q. 顧問先の情報をAIに入れてもよいですか?
税理士には守秘義務があります。どの情報をAIに渡してよいか、渡さないかの線引きを、使い始める前に決めてください。まずは顧問先の個別の情報を使わない定型作業や、よくある質問への一次対応から始めると安全です。
Q. GoogleのAIによる概要に引用されるために、特別な対策は必要ですか?
必要ありません。Google は、AIによる概要やAIモードのための特別な最適化や、AI用の特別なファイルは不要だと説明しています。インデックスに登録されていること、スニペットを表示できる状態であることなど、通常の検索結果に表示されるための基本がそのままAI対策になります。
まとめ
税理士事務所のAI対応は、2つの領域に分けると全体像を把握しやすくなります。
- 業務でのAI活用では、定型作業をAIに任せ、税法の解釈や個別の判断は税理士が担います。小規模に始め、設定と判断基準を文書にしてから広げましょう。
- 集客では、GoogleのAI表示に向けた特別な対策は不要です。基本のSEO、Googleビジネスプロフィール、税理士本人の名前で書いた信頼できる記事を積み重ねましょう。
どちらの領域も、小さな範囲から始めて問題ありません。テーマ別の7本の記事から、関心のあるものをひとつお読みください。
「自分の事務所のサイトが Google に登録されているか分からない」「どの作業からAIに任せればよいか分からない」という方は、税理士AIの無料相談をご利用ください。事務所のホームページの状態と業務の状況をうかがい、最初に着手すべき点を一緒に整理します。まずはお気軽にお問い合わせください。
参考・出典
- Google 検索セントラル「AI 機能とウェブサイト」 https://developers.google.com/search/docs/appearance/ai-features?hl=ja
- Google Search Console ヘルプ https://support.google.com/webmasters/answer/9128668?hl=ja
- Google 検索セントラル「SEO スターター ガイド」 https://developers.google.com/search/docs/fundamentals/seo-starter-guide?hl=ja
- Google 検索セントラル「有用で信頼性の高い、ユーザー第一のコンテンツの作成」 https://developers.google.com/search/docs/fundamentals/creating-helpful-content?hl=ja
- Google 検索セントラル「生成 AI コンテンツに関する Google 検索のガイダンス」 https://developers.google.com/search/docs/fundamentals/using-gen-ai-content?hl=ja
- Google ビジネス プロフィール ヘルプ「Google のローカル検索結果のランキングを改善する方法」 https://support.google.com/business/answer/7091?hl=ja
- Google 検索セントラル「ローカル ビジネス(LocalBusiness)の構造化データ」 https://developers.google.com/search/docs/appearance/structured-data/local-business?hl=ja
- 国税庁「税務相談チャットボット」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/chatbot/index.htm
- 日本税理士会連合会「税理士の業務」 https://www.nichizeiren.or.jp/cpta/about/
- 日本税理士会連合会「税理士を探す」 https://www.nichizeiren.or.jp/cpta/
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